紀行文の部屋

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七尾線変身前夜 2

高架ホームに姿を現した3両編成の車両に気持ちも高ぶる。

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お目当の413系

 

しかし車内は新快速電車で見られる座席に自動ドアボタンと近代的な内装で、50年変わらず乗客を運びながら、また変化して生き抜いてきたのだなと勝手に思う。この車両、1960年代に急行型車両として製造され急行亡き後は改造・改番されローカル輸送用として命を繋いできた。そうした中七尾線には改番されずに走る仙人のような車両が改造車両に連結されて2両だけ残っている。あわよくば乗りたいがこの時点で半ば満足した。

 

北陸本線IRいしかわ鉄道を直通し七尾線との分境駅、津幡を出ると電化方式が改められるために電気が一旦消灯する。1週間後に投入される新型車両の性能を以ってすると消灯はしないためこの光景が見られるのもあと僅か。金沢から津幡までは立ち客が出る程に混雑していたが七尾線内は終始空いていた。

 

同線を時刻表で見ると横山ー南羽咋など妖艶な日本海を見させてくれそうだがそういった期待はしないほうが良い。車窓は凡中の凡で海は一切見えない。でもそれはそれで雰囲気がある。10:50、羽咋で下車。11:08の観光特急・花嫁のれんで実質の終点・七尾を目指す。こちらも国鉄型特急を華やかに改造したもので1日中うるさいモーター音を聞くことができすっかりいい気分だった。入線のずいぶん前から「ハナミズキ」が接近音として流れこれまでに経験したことがないほど感動的な演出のもとアテンダントが出迎える。

 

適当に発券した座席番号は10番C席。嫌な予感はしていたがBOX席の通路側で先客が2人居た。

相席のおじさんは僕を好意的な態度で受け入れ窓側の席を譲ってくれた。金沢の生まれで東京からの友人と和倉温泉に泊まりで行くという。暫くすると東京からのおじさんがやってきて、挨拶も早々にリュックからパンツを取り出してトイレに戻っていった。どうやら勢い余ってやってしまったらしい。こういう話を書くのは気がはばかるが恥じらいといった事物を超越した人物であることが話していて分かったのでありがたくネタにさせて頂く。僕含めた3人には偶然の共通点があり会話もぎこちなくではあったが親切にしてもらった。特急・花嫁のれんは特急とは思えないノロノロとした走りっぷりで11:34、七尾に到着した。その名前には普通列車と変わらぬ走りでも特急料金を取る気の強さ、かかあ天下の意も込められているのかもしれない。

去り際、「今度は彼女を連れてくるようだ」と言われ「この列車はぴったりですね」と返すと「案外ませたこというんだねぇ」と笑ってくれた。

 

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花嫁のれん」の原型

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花嫁のれん